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   リーディング・テーブルって何?  

「リーディング・テーブル」とは、
直近1・2ヵ月間に読んだ本。
これらの本について、気軽にトークし合うだけのもの。
 
推し本ではないので、冊数制限はありません。
プレゼンでもありません。
お茶でも飲みながら、本についておしゃべりするだけ。


やることはシンプルですが、狙いが幾つかあります。

まず振り返ること自体が、記憶を強化。
そして発表を前提に読むことで、読みの真剣さも増します。
 
また概要を述べることにより、
内容の整理化と言語化をも期待。

他の人がどの様な本を読んできたのか、
直に知る機会も提供してくれます。
(またそれら一連のものが読書歴アーカイブにもなる)



さらに読んだ本について語ることは、
溜まっていたものを吐き出す行為。
一種、えも言われぬカタルシス的な爽快感を伴います。

このスッキリ感が、次の読書への推進力にもなるのです。



世の中には、素晴らしい本が沢山あります。

何回でも申し上げたいぐらいですが、
それこそ宇宙にきらめく星々の如く、
面白い本が無数に存在しているのです。

ですが悲しいかな、浅学非才の身では、
そのほんの一部しか把握できない。

せめて読んだ本の話だけでもと願っても、
周囲には、その仲間すらいないのです。
 


無い無い尽くしの極致、ここに極まれり・・・。



彼女がいないのには我慢ができます(本当か?)。
収入が少ないのにも我慢ができます(本当か?)
しかしながら、読んだ本について語り合えないのには、
もはや我慢がならないのであります(これは本当)。



そこで少ない脳みそを絞り、ここに一計を案じました。
他の読書好きの方々のお力も借りようと。

互いに刺激を与えつつ、未だ知らない本も教えて貰える。
そんなコミュニティを作ろうと・・・。
 


ここで『マクベス』の魔女さながらに、
あなたの耳元へささやきかけたい。

なんの衒いもなく本について語り合いませんか?と。
興味関心のおもむくままに読んだ本。
それについて報告し合いませんか?と。

さらに未知なる本に出会うというセレンディピティを、
実際に経験してみたくはありませんか?と。
 
 
 
そしてその先には、
一体何があるというのでしょうか?

『マクベス』では、主人公夫妻に悲劇的結末が襲って来ました。
 
一方、読書好きの我々には、
いかな結末が訪れるのでしょうか?


・・・・。
 

そうです。

読みたい本がさらに増えてしまうというジレンマと陥穽の両雄。
この二つが、大きな口を開けて待ち構えているのです。

「あの本も読みたいし、この本も欲しい」。
この悪魔の囁きに悶え苦しむという喜びを皆さんと分かち合い、
共に味わってみたいものであります。

願わくは読んだ本を語りて読書人を戦慄せしめよ
(『遠野物語』ふうに)。

名称に人文書を付けてますが、
小説やコミック、サイエンス関連にノンフィクション・
ビジネス書・受験参考書など、何でもOK。

あなた個人のためにも、
そして他の参加メンバーのためにも、
是非気軽にお越しください。

私たちは諸手をあげて、
本好きのあなたを歓迎いたします。


「これまで出版されてきた数多の書物」という名の宇宙。
この広大な宇宙を、共に手を携えて探検していこうではありませんか。


最後に一言。   
 
万国の読書好きよ、団結せよ!!











 
​リーディング・テーブルの実際例〜その1 

「 リーディング・テーブル 」とは、「最近読んだ本」について、気軽にトークし合う形式のことです。

 

おススメする必要もなければ、プレゼン合戦のように順位付けも致しません。

また、メインテーマはあるものの、それにこだわる必要もありません。

要は、直近1〜2ヶ月の間に読んだ本。

これらについて感想を共有し合うだけの雑談会になります。

 

しかも順番にターンを回していくだけですので、リアルとオンライン。

双方に適した形式でもあります。

 

とはいっても、実際にどんな感じでトークするのか、気になる方々も多いようです。

そこで、実際に行われた「 リーディング・テーブル 」の文字起こしを作成しました。

 

どうぞ、ご笑覧ください。

( オンラインはZoomを使用 )

( レコーディング開始が若干遅かったため、冒頭の1~2分程度が抜けております)

 

最後になりますが、予定外の文字起こしだったにもかかわらず、当掲載を快く承諾して

下さった参加者の皆様に、あらためて感謝の意を表明致します。

(2020年に掲載したものから、当時の開催告知を割愛し再編集したものとなります)

 

 

主宰 海の旧字体は母 より

 

 

 

《 ここから「 リーディング・テーブル 」のスタートです 》

Bさん   興味があるのがまあ哲学とか民俗学と かあと、古代ローマとか結構好きなんで、そういう本を読んだりします。

まぁ、よろしくお願いします。

 

 

一同     よろしくお願いします( 拍手 )。

( Bさんの背後から、講談社学術文庫やちくま学芸文庫が積まれているのが見えるとの指摘に対し て)

Bさん   棚に入りきらなくて、上に載せているんです。

 

 

進行   みんな同じ悩みを抱えていますよね~。

 

 

一同    そうですよね~( 笑 )。

 

 

Cさん  そんなに人文書って読んでこなかったんで、( サークル名を見て )マジで言ってるのか?って、正直、思っちゃいました!

 

 

一同    アハハハハッ!( 大爆笑 )

 

 

Cさん   好きな本のジャンルとしては、文学文芸です。そこら辺はだいたいいろんな ジャンル読んでます。

まぁそういうことなんで、「 シェイクスピア 」とか、そういうところから紹介したいと思います。

以上です。 

よろしくお願いします。

 

 

一同   お願いします。

 

 

Dさん   皆さん、初めまして。Dと申します。

読書会自体は何回か出たことはあるんですけ れども、こうやって人文 書をテーマにした読書会ってのは初めてなので、すごい楽しみにしてます。

 

普段読むのは、ノンフィクション系が結構好きでして、元々歴史が好きなんで、結構歴史の本が多いかなと思います。

そこから派生して哲学だったり、いろんなジャンルを読んでます。

まだこの読書会の趣旨がよく分かっていないところもあるのですが、

よろしくお願いします。

 

 

進行    この「 リーディング・テーブル 」の名称なんですが、企画段階では、「 読書記録交換会 」だったんです。

そこから20以上の候補名が浮かんでは消えていきました。

その最中、たまたま「 アーサー王と円卓の騎士 」をモチーフにしたマンガ( 『  皆殺しのアーサー 』)を目にして、「 リーディング円卓会議 」というフレーズを思い付いたんです。          

まぁ、読書会は会議ではないんですけど ( 笑 )。

        

それで最終的に、サークル名は「 人文書リーディング・テーブル 」で。

開催するのは「リーディング・テーブル(読書会)」になった次第なんです。

 

 

一同     へぇ~( そうだったんだ )。

 

 

進行     頭に「 人文書 」の三文字を入れたのは、このジャンルを応援したいという意思表示なんです。

ただこの「人文書」を入れたことで、参加者集めには苦労するかもしれないので、正直かなり迷いました。

一方、方法論としての「 リーディング・テーブル( 方式 ) 」については、ジャンルに拘らず、小説や コミックなど何でも良いかなと。

例えば映画などであっても、ガイドブックならば条件を満たします。

そのガイドブックを紹介する限りではOKになっちゃうわけで ( 笑 )。

        

基本的に、本になっていれば何でも良いわけです。

 

というわけで、ジャンルを広く取り、硬軟おり混ぜて紹介していただければと思います。

 

 

一同   分かりました~。

 

 

進行   それに難しいことを述べる必要もありません。

読んだ本の感想を素直に吐露していただくだけで結構なんですよ。

       

プレゼンではありませんし、順位付けのようなこともしません。

気軽なトークをしていってくださいね。

 

また、無理におススメする必要もないんです。

 

 

一同      なるほど~。

 

 

進行   今月、こういう本を読みました とか、ああゆう本を読んだんだけど、〇〇って思った 、など気軽にトークできる場が周囲には無かったんですね。

       

そういうわけで、同じ環境にいる読書好きの皆さんのためにも、この「 リーディング・テーブル ( 方式 ) 」が、世の中に普及していって欲しいなと 願っております。

       

それと、個人的にはビブリオバトルが苦手なんですよ~ ( 笑 )。

 

 

一同    ( 笑 )

 

 

進行     Aさんとはリーディング・テーブルを一度しているのですが、読んだ本についてトークすると、本当にスッキリするんですよね。

 

 

Aさん    スッキリしますよね!

 

 

進行     あの爽快感を、皆さんにも味わっていただきたいですね~。

     

ところでAさん、どうでしょう?

スッキリすると、次の読書の推進力になりませんか?

Aさん    そうなんですよ!

本読む方って、入れっ放しのことが多いですからね。

 

一同     たしかに・・・。

 

 

Aさん   入れたっきり出て来ないみたいなことは、凄くあるんじゃないかなという気がしますね。

 

それとビブリオバトルみたいしちゃうと、やっぱなんか勝つみたいな方向に意識が行っちゃいますから、つい。          

良いプレゼンをしようみたいな。

 

もう喋りたいように喋るっていうのが、良いんじゃないですかね~。

 

 

一同   うんうん。

 

 

進行   では、この流れでですね ( 笑 )、経験者であるAさんからリーディング・テーブルを始めたいと思います。

Aさん、よろしくお願い致します。 

 

Aさん     やっぱ、そうなっちゃいましたか~。

一同   ( 大笑い )

Aさん   それでは始めますね。

先ほど、歴史が好きな方とか民俗学が好きっていう方もいましたよね。

 

そういった方とリンクするのかなって聴いていて思ったんですけど、(『 マンゴーと手榴弾ー生活史の理論 』、 岸政彦、勁草書房 )をカメラに見せながら)これ凄く面白かったです。

 

『 マンゴーと手榴弾 』っていう本です。

これは沖縄に密着取材した本なんですよ。

 

日本で社会学者っていうとどうでしょうか。

古市憲寿さんとか上野千鶴子さんとか有名ですよね。

数字データや統計データ駆使して、社会を批評していくっていうような印象があるんじゃないかなと思うんですけど。

 

一同    たしかに・・・。

Aさん     これを読んだ感じ、小説なんですよね、印象が。

社会学の中でも、数字とかをゴリゴリに使わないタイプのもあって、「 質的調査 」ていう言葉で言ったりするんです。

要するに出生率がどんくらいですとか 、GDP がどんくらいですというデータじゃなくて、人々のしゃべる「 語り 」に注目するんですよね。

          

例えば、日記に書いてある日記の文章とか、人の語りっていうのをインタビューして書き起こしたりしたことをもとに、もっと細かく見ていくタイプの社会学もあるんです。

 

それを「 質的社会学 」っていう用語で言ったりするんですけど、その第一任者とも言える方なんです。

著者の岸政彦さんという方は。

 

その人が沖縄戦について取り上げた本なんです。

この『 マンゴーと手榴弾 』っていうのは。

 

 

一同   ふんふん( うなずきながら )。

 

 

Aさん    その沖縄戦ですが、「 集団自決 」っていうすごく強い言葉が思い浮かぶわけなんですね。

 

旧日本軍から渡されてた手榴弾で、みんな集団自決するみたいなイメージです。

 

ただ、その沖縄戦を親から聞いたとか、実際自分を経験したっていう人たちに聞いてみるとですね、例えば、そのアメリカの兵隊さんにマンゴーあげたとか、向こうからお菓子を貰ったとか・・・。

 

そういう話って何て言うのかな、沢山掘り起こされてくるわけです。

          

だからあの集団自決があってアメリカの兵隊が攻めて来てっていうような、すごく戯画化されたイメージとは裏腹に、それに回収しきれない細かいエピソードが沢山出てくると。

 

 

一同   へぇ~。

 

 

Aさん    ということで、象徴的に、マンゴーから見えてくる沖縄。

それと手榴弾。

 

そこから連想される「 集団自決 」っていう風な戯画化された沖縄っていうものとマンゴーから見えてくる ものを対比させ、ディティールを描き出していくような本になってます。

 

 

一同     うんうん。

 

 

Aさん              で、まさにあの沖縄の民俗学的背景とか、あとやっぱり一人一人の話を聞き出していく・・・。

 

このように一人一人の物語を聞き出していくっていう作業の連続なので、読みようによっては、実在する人物を元にした小説のようにも読むことができるんです。

 

なんかこう頭がすごくあのマッサージされるような、あの、なんか気持ち良くなる本ですね。

 

社会学の数字とかいっぱい使ってる本を読むと、暗い気持ちになりますからね、どっちかっていうと。

こんなふうに格差が拡がっているとか、そんな話ばっかですよね。

数字に還元しきれないリテールっていうものを、解き明かしていくっていう社会学のやり方もあったりするわけで。

とてもおススメの本です。

 

 

進行       Aさん、面白い話をありがとうございました。

皆さん、何か質問がありましたら、遠慮せずに質問してくださいね。     

もちろん、後でもいいですから。

 

     (「「その2」へと続く)     

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​沖縄戦の模様
​リーディング・テーブルの実際例〜その2 

進行   それではリーディング・テーブルの経験者ということで、二番手は自分で参ります。

 

これは 先月、読んだ本になります。

現代文の大学受験参考書です。

タイトルは、『 大学入試 無敵の現代文 記述攻略メソッド 』( 小池陽滋、かんき出版 )。

 

著者の小池陽滋先生は、国語教育にたぎるような情熱を持たれている方なんです。

授業も非常に分かりやすいんですよ。

なぜ、こう言えるかというと、小池先生の父兄向け公開授業に出席した経験があるからなんです。

 

もちろん、父兄のフリをして、もぐりこんだわけですが。

 

 

一同    マジですか?( 笑 )

 

 

進行   この本が従来の現代文参考書と一線を画しているのが、出題された評論文のロジックの流れに沿って、「 本文メモ 」を作成しましょうという点を、明確に主張されている点かなと思います。

わりと解法重視の参考書が多いですから。

この「本文メモ」の作成こそが、現代文読解の真の基礎力になるとおっしゃってます。

 

 

ところで皆さんは、現代文の出口汪先生をご存知ですか?

 

 

一同    はい、知ってます。

 

 

進行    出口先生が読解力養成をテーマにした本で述べられているものに、「 ストックノート 」というものがあるんです。

 

要は、読んだ本の論旨をノート化していくこと。

 

この「 ストックノート 」の作成とそれを見返すことで、知識を身に着け、次の読書や現代文問題に臨んでいきましょうというものなんですね。

 

ただ、自分が読んだ出口先生の本では、大まかな作成方法しか述べられていなかった。

 

そのため、いざ実行する段になると、自己流にならざるを得なかったわけなんです。

 

そこに踏み込んで焦点を当てているのが、小池先生の本なのかなと思います。

 

 

進行   「 本文メモ 」の作成そのものが、読解力養成につながるという小池先生のお考えは、受験生だけでなく社会人にも非常に重要だと思うんです。

          

読解していったものが、私たちの思考の枠組みをかたち作って行くわけですからね。 

        

その意味で、読書好きの皆さんにもおススメの本になります。

 

 

一同   なるほど~。

 

 

進行   アッ!・・・。

        

おススメする必要はないと言っていたのに、やっちゃいました ( 笑 ) 。

以上になります。

進行   では進行役に戻りたいと思います。

それでは三番手にBさん、お願いします。

 

Bさん    自分が紹介するのは、「 荒蝦夷( あらえみし ) 」という仙台の出版社から刊行されている本です。

        

タイトルは、『 みちのく怪談名作選 Vol.1 』( 東 雅夫・編 )。

 

 

この「 荒蝦夷 」という出版社は面白い出版社で、社員が三人しかいないんですけど、東北地方に関する本を出してるんです。

 

この本は怪談のアンソロジーなんです。

東雅夫さんの本になります。

皆さんは、東雅夫さんをご存知ですか?

 

 

進行    はい。 怪談で有名な方ですよね。

 

 

Bさん     幻想文学や怪談とかの界隈では、知らない人がいないっていうぐらいの方なんです。

 

あの、『 怪と幽 』( KADOKAWA )ていう雑誌があるんです。  

        

以前は、『 怪 』と『 幽 』とで別々の雑誌だったんですよ。

       

『 怪 』は妖怪専門誌。

一方の『 幽 』は、怪談専門誌だったんです。

 

 

一同   マジか!(大笑い)

 

 

Bさん   柳田国男の『 遠野物語 』で有名な佐々木喜善や宮沢賢治。

それに、太宰治や斎藤茂吉などの作品などが選ばれているんです。

 

その中でも異色なのが、寺山修司の2本のルポルタージュ、「 キリスト和讃 」と「 恐山 」。

 

このうち「 キリスト和讃 」の方は、青森県の三戸という場所に、あのキリストが来ていたっていう伝承についてのものなんです。

 

 

一同  (一瞬、目が点になる・・・)

 

 

Bさん   ゴルゴダの丘で十字架にかけられたのは実はキリストではなく弟のイスキリであって、キリスト本人は青森まで逃れて来て、農家のミオという娘と結婚したんだ、みたいな伝承があるんです。

 

すごい怪しげな古文書などがあるらしくて、ま〜、その・・・、 えっと、何だっけ?

        

そうそう、三戸郡の新郷村っていう所なんですけど、寺山修司が実際にルポルタージュのために訪れてみたっていう話なんです。

 

 

一同   わざわざ行っちゃったんだ・・・。

 

 

Bさん    一方、「 恐山 」の方は、みなさんご存じだと思うんですけど、死者の魂を呼び寄せるイタコさんのところへ行ってみたルポです。

 

なんと、あのキリストを呼んで口寄せして貰ってるんです。

        

寺山修司本人がしてもらったわけじゃないんですけども、そういう記事が載っているんです。

 

 

一同   エッー!?   

キリストを呼んじゃったの?・・・(呆然) 

 

進行   キリストのお墓もあって、1年に1度、「キリスト祭り」ってやってるんですよね?

 

 

一同   マジですか!

 

 

Aさん   たしか「 TRICK 」っていうドラマ、昔ありましたよね。

あれみたいですね。

よく分かんない謎の村とか出てきたり( 笑 ) 。

 

 

一同   あった、あった!( 笑 ) 。

 

 

Bさん    この本の表紙はこんな風でして・・・。

        

なんか結構怖い感じなんですけど、中身は割と東北の伝承とかに興味がある人なら結構楽しめるかなって思いますよ。

 

話しが上手くなくて、すみません。

 

 

一同   めちゃくちゃ面白い話しでしたよ!

 

 

Bさん   この本に収録されている「 鍋の中 」っていう、井上ひさしが書いた短編なんですけど、出典が彼の『 新釈遠野物語 』っていう『 遠野物語 』のパロディがあるんですよ。

 

そっちも面白いんです。

 

この「 荒蝦夷 」っていう版元は、仙台のローカル出版社なので、東京の大型書店に行ってもあんまり見かないんですよね。

 

まぁ、もし興味あって読みたいって思ったら、本屋さんで取り寄せる しかないんですけど。

 

こんな感じです。

ありがとうございます。

 

 

一同     ありがとうございました!

 

 

進行      地方出版社の本に関しては、誰かの紹介がないと、情報自体が届かないですからね。

 

 

一同       たしかに。 

いや~、それにしても凄かった・・・。

 

 

Dさん     東北地方へ行ったら、その土地の本屋さんも訪問して、「 荒蝦夷 」の本を探したくなりましたね。

 

 

一同     うんうん。

 

 

進行      旅行する楽しみが増えますよね。

それにしても、この本の表紙はヤバイ・・・。

 

 

一同  ( 大爆笑 !!)

 

 

進行         ( 笑いながら )Bさん、ありがとうございました。

 

それでは次のDさん、お願い致します!

 

 

 

                 

​    (「その3」へと続く)     
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ヤバいって,
言われちゃった・・・。
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​柳田 国男
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​リーディング・テーブルの実際例〜その3 

Dさん       最近読んだ本を紹介しますね。

先ほど、ちょっとキリストの話が出てきたんですけど、私はムハンマドの話しをします。
 
歴史が好きなんですけど、まだそんなに特定の時代が好きみたいな「 推しの時代 」がなくてですね、いろいろ読んでいるところです。                  
最近、たまたまムハンマドについての本を読んだんです。

                         

あの、ちょっと脇道にそれるのですが、『詳説世界史研究』とか、山川出版社の歴史教科書って有名だと思うんです。

                         

けれど、その教科書を見たら、あのムハンマドに関する記述って、たったの 1 ページしかなかったんですよ。

                         

大天使ガブリエルから神の言葉を受け取って死去するまで、もう、わずか 1 ページでまとめられちゃっていて・・・。

                         

まぁ、日本の中東認識って、そんぐらいなんだろうなっていうのは、正直、感じました。

                         

でもこの本 ( 『 ムハンマド イスラームの源流をたずねて 』小杉泰・山川出版社  ) は、なかなか日本だとイメージのしづらいムハンマドの生涯。

 

これを、200ページぐらいにコンパクトに、しかも分かりやすく説明してくれてるんです。

 


一同      面白そう~。

Dさん     3 時間ぐらいあれば読めるサイズになっていて、凄く理解しやすかったです。


ムハンマドが起こしたイスラム教って、今たしか10億人ぐらいの信者がいるんですよね。
                      

世界三大宗教の一つに入ってくるんです。

                         

それでイエスや孔子と比べても、圧倒的に幸福な人生を送った人なんですよね。彼自身は。

 


進行    たしかにムハンマドは、人生の成功者と言えますもんね。

 


Dさん         イエスなんて磔にされて殺されてしますし、孔子なんてずっと自分を売り込んできたけど成功できず、弟子の育成にシフトチェンジせざるを得なかったわけで・・・。

        

その中でもムハンマドはですね、商売しても結構繁盛しますし、奥さんにも恵まれてですね、可愛い子供も娘が4人いますし。

         

男の子も生まれたみたいなんですけど、あの時代なんで早く亡くなっちゃったみたいですが、女の子が4人いますよと。

        

友人にも恵まれ、神様にも選ばれて。街の市長みたいなこともやってましたし。

        

住んでいた町を出て、メディナっ場所に移転した時に、彼は当時は新興宗教的な立場だったので、元々住んでたその町とは、どうしても対立するんですよね。

        

そうすると戦いになるんですけれども、結構、軍事的な才能もあるわけなんです。

        

そして最後は、9人か10人もの奥さんもいてって・・・。

 


一同    うん、成功者だ・・・。

 


Dさん   一番お気に入りはアイーシャっていう45歳も若い奥さん。

     

ムハンマドが亡くなったのは63歳だったと思うんですけれども、その最愛の18歳アイーシャの腕に抱かれながら息を引き取るんです。

 


一同    へぇ~。

 


Dさん    ムハンマドは25歳で最初の結婚をしているんですが、その時、最初の奥さんが四十歳だったんです。
                         

15歳離れてて、姉さん女房だったんですよね。

                         

それで40歳の時に、ガブリエルから神の言葉を聴いて、あのイスラムの布教活動を始めるんですけれど・・・。

                         

その直前、ムハンマドが山にこもってると、いきなり神様の使者が 来るわけですよね。この言葉を読めと。

                         

でもその時、ムハンマドって文字読めなかったんですよ。

 


一同     えっ! そうなの?

 


Dさん             当時の識字率は高くなかったので。
「 私は文字は分かりません 」って言うとですね、結構面白くて神様の使いのガブリエルが持ってた布袋みたいので、ムハンマドに めっちゃ押し付けてくるらしいんですよ。
 
息もできないぐらいに。

        

それを何回か繰り返すうちにムハンマドは文字を読めるようになったというエピソードが面白かったです。

 


一同   そんなエピソードがあったとは・・。

 


Dさん                ムハンマドさんが主体になって始めたっていうのが、結構ポイントなのかなと思います。

                         

孔子にしても、彼の教え自体は弟子が広めたりだとか。

                         

イエスなんて、自分がキリスト教徒だと思ってはないんでよね。
                 
        

100年後とかにイエスに会ったこともないパウロが、「 イエスはこんなこと言ったんだぜ 」って広めたように。

          

つまり考えや教え自体が、その創始者からかけ離れることが多いんですけれども、ムハンマド は自分が神様からこういう声を聴きましたよ。          

 

それをそのまま私は皆さんに伝えますよって広める。
             
そして、それを直接聴いていた人達が20年ぐらい後に、ムハンマドが言ったことをかき集めて、ちゃんと1つの聖典にまとめたんですね。
                        
それが『 コーラン 』と呼ばれるものになっていって。

 


一同   そうなんだ~。

 


Dさん     他にもそのパクリじゃないですけれども、ちょっと違う異端扱いの本もあったんですけど、3代カリフのウスマーンが全部焼いてるので、それなりに正当なものが残ってるのかなと。

            

その意味で、僕は結構イスラム教が好きなんですけど。

                       

すごく面白い本でした。

 


一同   ありがとうございました(拍手)


進行   ちょうど今、ムスリムの方達はラマダンに入ってますからね。時期的にも、とても面白いお話でした。ちなみに、その本の出版社はどちらですか?

 


Dさん              この本も山川出版社です。

「 ヒストリア 」というシリーズを始めたらしくて、なんか割とニッチなテーマを扱っていますね。

                         

このシリーズは、切り口がちょっと変わった本が多いのかなっていう気がします。

                         

そうですね〜・・・。

このシリーズとしては、『 虎が語る中国史 エコロジカル・ヒストリーの可能性 』( 上田信 )を読んだことあるんです。

 

中国の昔の王墓から出てきた副葬品の中に、動物のサイや虎のオブジェがあるんですね。

           

今でこそ、サイや虎は南方に生息している動物なんですが、古代中国の殷や周の時代には、身近で見られた動物だった。
   
だからこそ、そういったオブジェが残っているわけで。
        

文明が少しずつ発達し経済成長すると、基本的には森林地帯を切り開き、その土地を農地などに開発していくんですよね。

        

だから、これに伴い、そこに生息していた動物たちを見かけなくなるんだよと。

        

なんかそういったことが書かれてました。

 


一同   なるほど~。


進行   副葬品の変遷で、当時の自然環境や社会状況を解き明かそうと試みている本なのですね。

 


Bさん    あの~、すみません。

用事があって15分ほど中座しますね。

 


進行     そうでした、そうでした。
午後3時になったら15分ほど一時的に離席される予定でしたね。
必ず戻ってきてくださいね~。
待ってますよ~。

 


Bさん     それでは一旦、失礼しま~す。

 


進行    Dさん、ありがとうございました。
では次に、Cさん、宜しくお願いします。

 

​    (「その4」へと続く)     
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​大天使ガブリエル
(レオナルド・ダ・ヴィンチ「受胎告知」より)
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​リーディング・テーブルの実際例〜その4 
Cさん              はい。

 一冊目は渡辺一夫さんの『 寛容は自らを守るために不寛容に対して不寛容になるべきか 』( 三田産業 )です。

         

「 隣りの柿はよく柿食う客か 」という早口言葉みたいなタイトルなんですけど・・・。

                         

あっ、逆か!

 


一同                 ( 大爆笑 )

 


Cさん              一度聞いても、3分後には忘れてしまうようなタイトルの本ですよね。

        

購入のきっかけが私、井坂幸太郎が好きで、『 死神の浮力 』( 文藝春秋 )っていう小説の中に引用されてるんです。ちょうどピッタリ同じ言葉が。

        

それで新宿の紀伊國屋書店の中を歩いてたら、偶然、全く同じフレーズのタイトルの本を見つけたんで、「 あっ、これや! 」と思って買ったんです。

        

けど、まぁ~難しくて、難しくて(笑)。

 


進行    タイトルに惹かれてのジャケ買いだったと。  

 


Cさん         そうなんです。「 寛容は、自らを守るために不寛容に対して不寛容になるべきか 」って  いう問いに対して、渡辺一夫自身で答えを一つ出してるわけなんですけど・・・。

 


進行   解答を出されてるんですね。

 


Cさん        誰の研究だったか忘れたんですけど、アメリカの研究で、25人に1人はサイコパスが存在するという説があるんです。

        

まぁそういう研究の下で、そういう人たちを不寛容グループに属するとみなした場合、それ以外の人間はその不寛容の人達に対して、どう対処すべきなのか。

        

自力救済って言っちゃったらすごい簡単ですけど、暴力を行使して対抗することが許されるのかどうかっていう・・・。

        

簡単に言うとそういう命題です。

 


一同    へぇ~。

 

Cさん       この渡辺一夫さんは、そもそもフランス文学者なので、きっとここから引っ張ってきたのではと思って、ヴォルテールの『 寛容論 』
( 光文社古典新訳文庫・中公文庫 )も読んでみようと思ったんです.

 

でも、まだ手を付けてなくて・・・。

        

渡辺一夫さんが出した答えは、不寛容になるべきではないっていうところで・・・。

 


一同      そうなのか・・・。

 


Cさん              びっくりするぐらいキレイ事ですよね。


一同      へぇ~。(様々な反応あり)

Cさん    その理由が沢山あり、長々と述べてるんですけど・・・。

        

要点をまとめると、そもそも寛容と不寛容の対立問題は、理性とか知性とかが成立する人間同士においてのみ成立する問題なんだと。
             

例えば相手が猛獣だったり自然災害だったり、まあ金とか、そういうものだったりしたら、論外とするべきであろうっていう点を前提にしていて。             

そこから展開していって、人間の中には猛獣的な人間もいるし、天才的に害をなすことを嗜好する人物もいるし。

        

このような人達の存在も考慮すると、その暴力的発作が予測し得ないっというか、対策をとることが不可能なっていう場合もあるだろうと。
              
そういう場合においても、非人間的な取り扱いはしてはいけないっていうジレンマがあるよね、

っていう話しも出てくるんですけど・・・。               
        

とても回りくどいお話です。

 


Aさん   まぁ、それ以外の書き方ができないですよね。

 

Cさん       仕方がないんですけど、やっぱりどうしても・・・。

        

それでキリスト教とかの話も結構出てくるんです。私はキリスト教に関して全く分からないので、そのあたりはどうも・・・。

         

これ以外にもマーサ ・スタウトさんの『 良心をもたない人たち 』( 草思社文庫 )という本も読んだことがあるんです。

 


Dさん   それ読みました。面白かったです。

 

Cさん    人の心が分からない人間がいるという。そういう人達の特徴を述べていって、最後にこの人達といきあった時にどう対処すればいいのか。

        

それをテーマにしている本だったんですけど。

 


一同           ちなみに、どういう結論になんでしょうか?

Cさん     幸せになることが一番の報復になるっていうのがあって、私はそれが結構面白いなぁって思いました。

 


一同               なるほど〜。そうですよね。

 


Cさん      なんかすごい普遍的な真理を述べただけですけど・・・。

        

まぁ結局、この本( 『 寛容は自らを守るため不寛容に対して不寛容になるべきか 』)も、それに通じるところがあるんだろうなって。
                
不寛容に対して不寛容になっちゃいけないけど、でも何か別の方向で自分の身を守ることはできるよねみたいな。

        

そういう感じの本です。

 


一同   ( うなずいている人が多い )

 

Cさん   エッセイなので、がっつり論点に臨んでいる本ではないんですけど、本当に徒然なるままに書いているんですよね。

        

それとこの本の装丁、綺麗ですよ〜。        

私は好きです。

        

こんな感じです。

以上でーす。

 


一同    ありがとうございました~。

 

進行    Cさん、ありがとうございました!            

 

今、午後3時10分になるところです。

10分間、休憩を取りましょう。

​    (「その5」へと続く)     
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​仏文学者・渡辺一夫
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​リーディング・テーブルの実際例〜その5 

 ※休憩中に、Bさんがオンラインに復帰してくる

 

Bさん    Cさんの順番はどうなりましたか?

 


一同    ちょうど終わっちゃったよ~( 笑 )。

 


進行        今、休憩中なので、みんなリラックスしてね~。

 

Aさん          休憩時間中ですが、サイコパスの話でちょっと思い出したんです。
              
学校のクラスに、例えば30人くらい子供がいたとします。それで、大体30人に1人くらいの比率でサイコパス的なイジメっ子ているらしいんですね。

        

そいつが誰かをターゲットにイジメをした場合に、そのイジメの程度はどんな要素で左右されるのかって研究があるんですよね。
                  
なんか、「 囚人のジレンマ 」というか、「 ゲーム理論 」みたいな研究してる方なんですけど。
        

えっと、山岸俊男さんっていう社会心理学者の方なんですね。「 信頼 」の研究もされてます。

それで結論は、「傍観してる人数の比率」。

これが重要な指標となるようなんです。

        

いじめる人といじめられる人がいて、そのクラスのうち、例えば10人ぐらいが傍観するか、それとも11人が傍観するかといったような、何らかのボーダーライがあるらしいんです。
              
そのラインを超える傍観者がいると、イジメが酷くなっちゃうみたいな。

       

 だから不寛容か寛容かとは別に、傍観しない人の人数が大切だって言ってる研究者もいるんですよね。

 


Cさん   まるで日和見菌の比率みたいな話しですね。

Aさん          まさに、そうなんですよね~。


※ ここで、遅れて参加予定だったEさんが、オンラインに登場!

 


進行      Eさん、お忙しい中ありがとうございます。たしかスケジュールの都合で、1時間しか参加できないんですよね。
         
      
Eさん      そうなんです。

ろしくお願いします。

 


進行     こちらこそ、よろしくお願いします。

あっ、休憩終了予定の時刻となりましたので、再開しましょう。ちょうど一周しましたので、Eさんから始めましょうか。

 


Eさん

( 某大学の学部生であるとの自己紹介の後 )
フランスの現代思想が好きです。


一同    先ほどの話とフランスでつながった! ( 渡辺一夫  →  フランス文学者  →  フランス現代思想 )

 


Eさん     最近、Twitterで、プルーストの『 失われた時を求めて 』の原書を一文ずつ訳していくというのをやってるんです。

 


一同            オッー、凄い~!

 


進行    いきなりというのもあれなのですが、今月読まれた本について紹介いただけますか。

気軽にしゃべる感じでいいですからね、ホント

 


Eさん   はい。分かりました。
そうなると、やっぱりこれになるんですが、
( フランス語で書かれている
の『 失われた時を求めて 』を差し出し ) 。
            

画面共有してもいいですか?

 


進行     どうぞ、どうぞ。


Eさん   PDFになるんですが、これが1ページ目で、こっちが2ページ目。
                         

毎日、午前9時と正午に日本語に翻訳してるんです。今、訳しているのがこの箇所です。
 

Aさん   これで1文なんですね。それにしても長い!

 


Eさん    プルーストの特徴をあげるとすれば、1つの文がホント長いんです。
             
例えばこのページでいうと、( カーソルで示しながら )16ページのここから、18ページのここまでが1個の文章なんですよ。

                         

ただ、実際には、文の途中にあるこの記号

(「 ,」)。


この箇所で途切れているので、訳す時はこの記号までになるんですね。
            
フランス語はこのように、一文の中で、どんどん後ろに表現をくっつけていく言語( 後置修飾という )なので、ただでさえ長くなりがちなんです。 
         
さらにプルーストは自分が言った言葉に対して、連想ゲームみたいに、メタファーを次から次へとくっ付けていく癖があるんですよ。

 


一同      へぇ~。

 


Eさん    えーと、例えば、これが原書の2ページ目の翻訳になるんですけど、主人公の「 私 」が、夢うつつの状態なんです。頑張って寝ようとしてるんですけど、意識が夢の中に出たり入ったりし
ている。
                         

そんな状態なんですね。

        

目を閉じた時の暗闇がホッとするような感じだったんですけども、ここを見てください。

         

「 その暗闇は理由のないようなものに、不明瞭なものに思えた 」から、なぜか汽車っていうメタファーを持ち出してくるんです。

          

その汽車の「 汽笛 」から、まずは「 鳥のさえずり 」というメタファーが続く。

        

そして先ほどの「 汽車の汽笛 」から、今度は「 駅 」が連想されてきて、そこから「 駅のある、平原の広がり 」が生じてくる。

        

すると、さらに、「 駅を取り囲む街の中の風景 」がプルーストの脳裏をよぎってくる。

        

こんな感じで、ひとつの単語を出したら、連想ゲームのようにドンドン広がっていって、それが『 失われた未来を求めて 』の作品世界を構築していってるんです。

        

自分には、それが面白いなって感じられるんですけど。

 


一同     ( 集中して聴いている )

 


Eさん    そうそう。ここですよ。
 

枕に自分の頭をもたれかけるんですけど、その比喩がなんか、「 枕の表面は中身は詰まっていて、爽やかであり、私たちの少年期のほほのようであった 」っていう。

        

こんな感じで、不思議な表現も使ってくるんだなと。

        

これも訳してて面白いなってところですね。

 


一同      すげ~。


進行      翻訳に挑戦しようとしたきっかけは何だったんですか?

Eさん      在籍している某大学の読書会に参加してるんです。
               

そのメンバーから、「 新型コロナの自粛で時間があるからこそ、普段、絶対に読まない本でもやろうや 」っていう話が出て。

じゃあ、これだなっていうことになり。

 

Aさん    読まないわ~、たしかに。

Eさん    せっかくならフランス語が読めるし、原典で読もうかということになったんです。

        

で、PDFで無料公開されているので、これ訳してみますわ、ということになって.

それを今、日本語にしてるんですけど。 

        

・・・楽しいですね、ホント。       
        

訳していて、フランス語っていう言葉の可能性を感じるというか。
                         

日本語もそうなんですが、普通の論理展開なら繋がらないような言葉に繋がっていくんですよ。

        

あらためて、言語って凄いなって再認識してす。

 


Bさん     ラカンとかデリダとかドゥルーズの著作は、フランス語の原書で読まれたんですか?

 

Eさん   デリダはフランス語で読まないと意味が分からないと思います。

                

フランス語で言葉遊びをしている箇所があって、むしろ日本語で読んじゃうと意味が分からなくなっちゃうんですよ。

        

それと好きなのはレヴィナスになります。

 

Aさん      デリダについての日本人研究者って沢山おりますけど、そういった人達の書籍てどうなんでしょう?
        

一般的には「 脱構築 」いう概念が有名で、それについて書かれた本は多いんですけれど、それらを読むのはどうなんでしょうか?

 

Eさん   原書を読むことをおススメしますね。

        

デリダ自身が言っているのですが、言語の解釈って、無限に横滑りしていくってことなんですね。

        

あるオリジナルというかモデルとすべきものがあって、そこから階層構造になっているわけではなくて、全ての解釈が模範とすべきモデルを持たないまま展開してるだけなんだっていう。

        

そのため、デリダに関しての正しい解釈って無理なんですよね。

 

Aさん    自己矛盾してるような感じですよね。

 

Eさん        そうですね〜。                         

ケースバイケースになるんですが、それについてレポートや論文など、ある程度の結論を提示しなければならない場合には、その不可能性を自覚しつつも、言いたいことを言うしかないんですけれども・・・。

 


一同    なるほど~。

 

 

Eさん     逆に、どういうふうにデリダを解釈していけばいいのか。このことを考えるためには、今、世の中に出ている全てのデリダ解釈に目を通すのは必要だと思います。

 


進行     話しの流れを遮っちゃうのですが、Eさんのお話しを聴いていて脳裏をよぎったのが、ピエール・バイヤールの『 読んでいない本について堂々 と語る方法 』( ちくま学芸文庫 )なんです。

        

皆さんもご存知だと思うのですが、この本でバイヤールは、読んだとしても完璧な理解など不可能なんだから、全て未読と同じようなもの。

というわけで解釈は人それぞれなのだから、本についてもっと自由に語ろうよという趣旨を述べているんですよね。

             

あくまでも連想なので、そこに今のお話しとの論理的なつながりはないのですが ( 笑 )。

一同    ふんふん。

 


進行    ちなみに、この「 リーディング・テーブル 」ですが、学術的な正しさは求めていないんです。

        

別にこじつけでも何でもいいんですよ。
ここは読んだ本について、気軽にしゃべり合う場ですから。
        

皆さんも自由にトークしていって下さいね。
       

それにしてもEさん、貴重なお話し、ありがとうございました。

 

一同    ありがとうございました。

 


進行    そうだ!Eさん、もう一冊いけます? 

途中退席までの時間は、Eさん中心に回していきますから。

 


一同      ( 笑い声 )

 


Dさん  ボーナスタイムだ!( 笑 )。
 

​    (「その6」へと続く)     
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​マルセル・プルースト​
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​ジャック・ラカン
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​ジャック・デリダ
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​リーディング・テーブルの実際例〜その6 

Eさん   そうですね~。今月、読んだ本はいろいろあるんですけどね・・・。

 

これ(『 From the Enemy's Point of View: Humanity and Divinity in an Amazonian Society 』The University of Chicago Press 』)は、

エドゥアルド・ヴィヴェイロス・デ・カストロ

というブラジルの人類学者の本なんですけれど、

皆さんは聞いたことあります?

 

 

一同   ないですね・・・。

 

 

Aさん    キューバのカストロしか思い浮かばない・・・。

 

 

Eさん     哲学におけるドゥルーズに、人類学では、このカストロが対応していると言えると思うんです。

 

 

Bさん   山口昌男みたいな感じですか?

 

 

Eさん    そうですね。

 

 

Aさん     山口昌男は大好きですよ。

これ(『 病の宇宙史 』山口昌男、人間と歴史社 )を見てください。

 

 

一同      おおーっ。

 

 

Eさん    簡単に内容だけ見てみるとですね、ブラジルの北西部のアマゾニアっていう場所に住んでいる「 アラビテ 」という先住民族の宇宙観とか、

人生観・死生観というものをフィールドワークした記録なんですね。

そのアラビテ達の宇宙観ってどういうものかと言いますと、死者の魂は天国に着いたあと、天国に住んでいる神に飲み込まれて、それによって不死になるというんですね。       

 

全ての人は、天国に行って神に飲み込まれて神( の一部 )になってというプロセスの中に生きているのだと。

そして最終的に、今生きている自分は、自己とは異なる他者になるという考え方をしているようなんです。

 

これを哲学的に言い直すと、内部的な存在である自我っていうのは、そのまま地続きに、外部的な存在である他者とつながっていると。

そこに本来、境界はないんだという。

 

簡単に言えば、そういう考え方をしていると言えるわけです。

 

 

Bさん      西田幾多郎の「 絶対矛盾的自己同一 」を連想しますね。「 我のそこに汝を見る。汝のそこに我を見る 」みたいな。

 

 

Eさん    たしかに、そんな感じもしますね。

西田幾多郎の思想にハイデガーの思想がある程度対応していて、ハイデガーの言っていた「 存在論的差異 」みたいな問題が、ドゥルーズの『 差異と反復 』に引き継がれてみたいないところがあるので。

 

遠からず、西田幾多郎とカストロの書いていることは、親戚関係かなと思います。

 

 

Bさん   ちなみに、邦訳は出てますか?

 

 

Eさん    出てないんですよ、これ。

 

ただカストロの本は、『 食人の形而上学 : ポスト構造主義的人類学への道 』( 洛北出版 )が邦訳として出版されてますね。

 

それぐらいだと思いますね。カストロで邦訳されているのは。

 

 

Bさん        面白そうですね~。

     ( 興味津々の様子 )。

 

 

進行     神様が自分の子供を食べたり人を食べたりする話は、ギリシア神話のクロノスなど、いろいろありますからね。

 

そういった伝説としての食人行為は、なんとなく読書という行為にも通じる要素があるかなと思います。

        

読んで( =食べて )、自分の血肉にするという・・・。

 

それと先ほどの「 解釈の横滑り 」に引き付けて言うと、松岡正剛さんがおしゃっている「 編集工学 」。

 

それに近い要素もあるのかなって思います。

 

ただ、あの・・・。

読んだものとのズレが編集なんだと、よく分からな

いことをおっしゃっているのですが・・・・。

 

 

一同   ( 大笑い )

 

 

Bさん   松岡さんの「 編集工学 」って、よく分かんないですよね。

 

 

一同   ( 大爆笑!!)

 

 

Aさん     読書会でディスられる松岡正剛って・・・。

 

 

Bさん     ディスってるわけではないんですが・・・。

 

 

進行    「 編集 」や「 工学 」っていう言葉の持つ自分のイメージと違っていて、どうしても違和感というか押しつけ感があって・・・。

 

 

Aさん   読書会で「 よく分からない 」と言われる松岡さんって存在も、面白いですよね( 笑 )。

 

 

進行      ここは「 リーディング・テーブル 」です。自由にトークできる場ですからね。基本的に、何を言っても守られる場でもありますから( 笑 )

 

Eさん、ありがとうございました!

        

間に誰か挟んで、またEさんでいきましょうか。

 

 

Eさん     ありがとうございます。

​    (「その7」へと続く)     
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​エドゥアルド・ヴィヴェイロス・デ・カストロ
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ジル・ドゥルーズ
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​山口 昌男
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​西田 幾多郎
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​マルティン・ハイデガー
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​リーディング・テーブルの実際例〜その7 

進行        それじゃあ Aさん、2回目をお願いします。

 

 

Aさん   あれですよね。皆さん、ものすごく深いし広いし・・・。

いや、広く深いということで参りました、

ていう感じですね~。別に勝負してるわけじゃないんですけれどね( 笑 )。

 

 

進行    ここは本について気軽にトークする場で、競い合う場ではないですからね( 笑 )。

 

 

Aさん     では、今回はこの本を。

( 『 生活の質( Q、O、L、)を高める 』

 E・ディムネ、ジャン・ジャック書房 )。

 

これはジュンク堂でジャケ買いしました。

 

新型コロナで本屋さんも大変な時期ですから、はっきり言って購入理由は、もう何でもいいんじゃないかと思い、買っちゃいました。

 

これ、何についての本なのか説明しずらいんですが・・・。

 

一同      ほーっ。

 

Aさん    途中参加された方のために言うと、先ほど、僕はこれ(『 マンゴーと手榴弾ー生活史の理論 』岸政彦、勁草書房)を紹介したんですよ。

 

質的社会学の本なんですね。

社会学というと、計量データを使ったりなど、数学を使ったアプローチで社会を分析していくのがあるんですが、質的社会学は違うんです。

 

人の語りや日記など、そういうものから社会のディテールをつかんでいこうとするんですね。

 

 

一同    そうでした、そうでした。

 

 

Aさん        これから紹介する本はこの「 質 」っていう要素で、先ほどの話とつながってくるので、結構面白かったです。

 

それで、ウ~ン、なんかね、自己啓発本なんかと意外に近いんですよ。

 

例えば、自己啓発本で有名なのだと『 7つの習慣 』やナポレオンヒルの『 人を動かす 』などありますよね。

 

それらが共通するのは、社会的に立場を高めたりとか財を大きくしていくっていう方向で、主体的に考えたり良い習慣を身につけていこうっていう点なんですね。

 

 

一同     ふんふん。

 

 

Aさん   この本は、生活の質を高めるっていうことを目的にしていて、なんかハウツー本みたいな感じで面白いんですよね。

 

いろんなことが書かかれてありますが、なんかこう「 使用する物 」にこだわりを持とうみたいなことが書かれてあるんですよね。

 

例えば、いつも使ってるペンや消しゴムなど。

 

ああいうものが自分の脳の一部になるから、っていうふうに書いてるんですよ。

道具というかツールにもこだわるみたいな。 

 

 

一同    道具へのこだわりか~。

 

 

Aさん    ちなみに、この本の著者のディムネっていう人と仲が良く、まぁ議論の相手でもあったのがジョン・デューイって人なんです。

 

『 民主主義と教育 』って結構有名な本を書いている方ですね。

プラグマティズムでも有名な人です。

 

この人は、教育のカリキュラムを作る際、民主主義の社会を上手く回していくためにはどうすべきなのか。

       

この観点からカリキュラムを考えた人なんですよ。

 

つまり、民主主義の中で一市民として関与するために、教育システムをきっちり考えていこうとした人なんです。

 

そのデューイの思想的影響もあって、一市民として完成するためには、数学の方程式が分かるとか職業につながる知識を持っているっていうのも大切なんだけれども、「 質 」的な方向で発達するっていうことも大切なんじゃないかと言っているわけなんです。

 

ディムネという人は。

 

この本にはそのような内容が書かれているんです。

 

 

一同    へぇ~。

 

 

Aさん     ディムネのこの本に近いなって思ったのは、あのエーリヒ・フロムの『 愛するということ 』 。有名なフロムの本に、何か近い感じで読みましたね。

 

あれは愛するっていうことは技術であって、鍛錬できるっていうことを書いた本なんです。

 

その愛とかって、ある閾値を超えたら愛してるとかそういうことじゃないですよね。

 

それって「 質 」的なものですよね。

 

どのくらいのメソッドを遂行すれば、それが愛してることになるっていうふうに量的に換算できるものじゃないわけなんです。

 

愛してるっていうのは、質的な状態であると。

ステートなんだと。

 

ある人の中にも愛してる状態と愛してない状態があると。

そのうえで、愛してるっていう心の状態は鍛錬できるってことを言ってるんですよね、フロムは。

 

一同    確かに。

 

 

Aさん     それで、このディムネの本も、なんかそういう本じゃないかなと思っているんです。

 

だから僕はハウツー本が一概に悪いとは思ってなくて、その how toになっている対象が狭いんじゃないかって思ってますね。

 

目に見えるものとか量に換算できるものにだけ、その How to ってものを推し進めていくことに偏っている。

 

そのいびつな構造が、どっちかっていうと弊害として今、現れているのかなと。

 

 

一同    うんうん。

 

 

Aさん      つまり、量として換算できるものの外側に対しては 、how to というものが有効に提供されていないし、そこに留まっちゃっている人が多いのが現状かなと。

 

それらに対し、まぁちょっと教育って観点からは良くないよねっていうことを、このディムネとデューイは訴えていると思うんです。

 

まぁ、そんな感じです。

以上でした。

 

 

進行        Aさん。面白い視点からのお話し、ありがとうございました。

 

おっしゃるように、ハウツー本にも良い点はあるんですよね。

 

「人文書」と「ハウツー本」ってつながる要素があるのではないか。

または、両者をつないで読んでみてはどうか、などと考えました。

 

一同    うんうん。

 

進行     それで時刻を見ますと、あと10分少々しかEさんには残されていないのですが、どうでしょう?

        

Eさんに、再度お願いしようと思うのですが・・。

 

何度もごめんなさいね。

タイムセールみたいに振っちゃって。

 

 

Eさん  ( 思わず、吹き出しちゃう ) 。

 

いえいえ ( 笑 )。

どうしよっかな・・・。

 

 

進行    急に振られても、何というか、

困っちゃいますよね~。

 

 

一同    アハハハッ( 大笑い )

 

 

Eさん    読んだ本がいろいろあり過ぎて、

迷ってるんですけど・・・。

 

 

進行     そうしましたら、時間稼ぎに、

1分間だけ自分がトークしますね。

( ここで時間稼ぎというキーワードから、「 ウルトラマンセブン 」のカプセル怪獣 が脳裏に浮かぶも、口にするのを自制する )(注)

(注)カプセル怪獣とは、ウルトラマンセブンが変身までの時間稼ぎのために使用する手下の怪獣。
​あくまでも一時しのぎのためなので、基本的に強くない・・・。
それでも全力で頑張る姿が子供心に印象的で、いつも応援していた。
名前は、画像左からアギラ、ウィンダム、ミクラス。
​    (「その8」へと続く)     
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​ジョン・デューイ
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​エーリッヒ・フロム​
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​カプセル怪獣たち
​リーディング・テーブルの実際例〜その8 

進行   リーディング・テーブルでは初のコミック紹介になります。
                       

タイトルは『 テロール教授の怪しい授業 』

( 原作 : カルロ・ゼン、画 : 石田点、講談社 )。

      

時間がないので駆け足でいきます!
                              ( 以下は早口で進行 )

 


Eさん        ありがとうございます。

 


進行    これは、「 テロ 」について学術的に研究している教授と、その怪しいゼミに何となく入ってしまった生徒たちの物語なんです。
        

高学歴者ほど、テロ組織に勧誘されやすいらしいんですね。
        

まさに、この物語の生徒たちです。
 
                       

そしてテロ組織の手口の解明から、効果的な広告・宣伝手法や心理的アプローチ。
さらには、世論の動かし方など、大衆を扇動し巻き込んでいくにはどうしたら良いのか。

        

それを教授がゼミで、生徒たちに罠というか実体験をさせながら、解説していってるんですね。

        

昔、「 電通 」は新入社員研修で、フランスなどの現代哲学の講義を受けけさせていたらしい、

というエピソードがあるんです。
        

大衆にいかにアピールしていくのか 。これを、現代哲学を通じて学ばせていたと言われています。

         

このコミックも、まさに、人文書とビジネス書ってつながってんじゃね?
と言えるコミックなんです。以上です!

 

Bさん  『 完全教祖マニュアル 』

( 架神恭介・辰巳一世、ちくま新書 )みたい。           


一同    うん、たしかに〜。

 

 Eさん            お待たせしました。

これなんかどうでしょう。
 
『 思想地図  vol.4  ( 特集・想像力 )』」

( NHK出版 )です。

        

東浩紀や宇野常寛とかが執筆してます。
ゼロ年代のアニメとかゲームなどのサブカル作品を批評していく中で、文化的な想像力がどうなっているのかを分析している本なんです。

        

たとえばアニメとかマンガの想像力というものが、90年代の『 新世紀エヴァンゲリオン 』あたりから衰退していってるんじゃないかっていう議論がなされてるんですね。

        

と言うのは、アニメなどのサブカルチャーは、今の世の中に対して何らかの批評的な立場を取っていたわけなんです。
        

それなのに、いつの間にやらサブカルが、資本主義的な論理に支配されてしまったんですね。

消費者のニーズを満たすだけのものになってしまっているという。

 


Bさん   東浩紀の『 動物化するポストモダン オタクから見た日本社会 』( 講談社現代新書 )でも論じられてる内容ですね。

 

 Eさん   そうなんです。
 

「 動物化 」したままになっているという議論が、ここで展開されてるんです。

        

この本は2009年の出版なんですが、それから10年以上経過した今、その傾向が加速していってるんじゃないかなっては、思うところですね。

        

どんどん「動物化」しているという・・・。

        

言い方を変えれば、どんどん保守化しているということですね。

 


Aさん   同じことの繰り返しってわけですね。

 

 Eさん   そうです、そうです

 


Bさん   データベース消費というか、作品のもとになるデータベース自体は何も変わらないという・・・。

 

 Eさん    はい。まさにそのとおりですね。
「 異世界もの 」( なろう系  )なんかその典型じゃないですか。
 
ひとたび「 異世界もの 」がヒットして売れれば、同じようなコンテンツをひたすた配信し続けていく。
        

そして、それが評価されていくという、その流れがずっと続くわけなんですけど・・・。

 


一同   確かに・・・。

 

 Eさん   そういうところに、「 動物化 」の象徴が見て取れるかなと思うんですね。
         

以上です。
ありがとうございます。

 


一同   ありがとうございました!

 


進行   この「 動物化 」という視点で、いろいろなものを分析することができますよね。
        

ただ、その視点だけに頼りすぎるのも、また「 動物化 」ではあるのですが・・・。

 


Aさん    動物、動物って言っているオマエが動物やん、みたいな ( 笑 ) 。

 


一同      大爆笑

 


Dさん     使いやすい概念ですからね~。

 


Aさん   格好いいですもんね、「 動物化 」って。単純に。

 


進行    Eさん、ありがとうございました。

皆さん、欲しい本がまた増えてしまったのではないでしょうか。
        

Eさんはお時間が来るまで、視聴していって下さいね。

 Eさん    そうさせて頂きます。

​    (「その9」へと続く)     
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​リーディング・テーブルの実際例〜その9 

進行    で、順番でいうとBさんですね。
      お願い致します。

 

Bさん  何がおススメかな・・・。

 


進行         おススメする必要はないんですよ (笑) 
 

読んだ本について思ったことをトークするだけですから。この「 リーディング・テーブル 」は。

 

Bさん   では、今度は「 SF 」なんですが、これはレイ・ブラッドベリの『 火星年代記 』( ハヤカワ文庫SF )という本です。

 


一同   オオッー!( 歓声が上がる )

 


Aさん    いいなぁ~! 
                       チョイスが素晴らしいなぁ!

 


Bさん     読んだらメッチャ大好きになっちゃったんです。

        

ちなみに皆さんは、『 火星年代記 』を読まれたことはありますかね?

 


一同    ないんです。

 


Eさん   僕はありますよ~。

 


Bさん   そうなんですね!

                      ( とても嬉しそう )

        

タイトルに年代記と付いているだけあって、火星を舞台にした「 クロニクル( 年代記 )」なんですよね。

                       

( 本を広げながら )こうやって、目次に年表があって。

 


Dさん    ( 現在を起点にすると )もう10年後に迫ってるじゃないですか!

 


Aさん   ホントだ!
                        あとわずかだ。

 


一同      ( 大笑い )

 


Bさん   これ、ジャンルは「 SF 」なんですけど、すごく詩情に満ちていて、しかも小話としても面白いんです。

        

まぁ、あの・・・おっ、「 推し 」です。

 


一同    「 推し 」になった!( 笑 )。

 


Eさん    僕も「 SF 」好きっすよ。

 


Bさん   「 SF 」のジャンルで、お好きな作家はいますか?

 


Eさん      ウィリアム・ギブスンですね。

 

 

Bさん    『 ニューロマンサー 』のギブスンですね。

 


一同    オオッー!( 感嘆の声 )

 


Eさん     日本だったら、神林長平と伊藤計劃が好きなSF作家ですね。

 


Bさん     神林長平はまだ読んだことがないんです。


Eさん      彼の作品だと、こんなのがあるんです。『いま集合的無意識を』( ハヤカワ文庫)。
                       

これは短編集です。とても面白いですよ。

 


Bさん    (興味津々の様子で)

ちなみに、これ・・・、タイトルは中身にどれらい関連があるんでか?
    

どうしても気になっちゃうタイトルで・・・。

 


一同     ( Bさんが喰い付いた! )大爆笑

 


Aさん     面白い質問だ~!
 

Eさん     このタイトルの短編が最後に入ってまして、その内容が面白いんです。
 
SF作家の伊藤計劃が亡くなった10年後に、インターネット上で、その伊藤計劃を名乗る人からメッセージが来るとういう。


そういうストーリーなんですね。

        

で、ネタバレすると、伊藤計劃を名乗ってるのが、ネット上の「 集合知 」だという話しなんです。

 


一同     へぇ〜。


Eさん     伊藤計劃の『 ハーモニー 』( ハヤカワ文庫など )を読んだことありますか?

 


一同     ないです。

 


Bさん      僕は読んだことあります。

 


Eさん      ネタバレしても大丈夫ですか?
                         どうしよう・・・。

 


一同      ここまできたら、大丈夫 ( 笑 )。

 


Eさん    簡単にまとめると、人類が全て、「 集合知 」になるというストーリーなんです。
そして、その状態を「 ハーモニー 」って呼んでるんです。

        

それで、おそらくですが、先ほどの『 集合的無意識を 』という短編。
        

この物語の中で、語り手にメッセージを送ってきたのは、ハーモニー化された人類の集合知なんだと。

        

伊藤計劃の『 ハーモニー 』という作品への、神林長平からの回答が、『 いま集合的無意識を 』なんじゃないかなと思うんです。
(注・伊藤計劃は2009年に逝去)

 


進行    一種のオマージュといいますか、

作品を通しての応答がなされてるんですね。

 

それとBさんもEさんも、SFファンだったとは。        

お二人とも、ありがとうございました〜。

 


一同    ありがとうございました~。

 


進行    そろそろEさんの次のスケジュールが迫っているのですが、ここで、皆さんにお願いがあるんです。

        

それは「 リーディング・テーブル 」で紹介して頂いた本の画像データを、後ほど送信して欲しいんです。

        

まず必要なのが、紹介した本全てを棚刺しのようにまとめた画像。
それを、サイトの方へフォトギャラリーとしてアップします。
        

それが皆さんの読書アーカイブにもなるんです。

        

それから余裕があれば、個々の本の表紙を写したものもあれば、ありがたいです。

        

ご協力のほど、宜しくお願い致します。

 


Eさん     どこに送ればいいですかね。

 


進行    サークル名を検索して頂ければ、サイトが見つかるはずです。        

そこに、連絡先としてのEメールアドレスが掲載されてるんです。そちらへ送信して頂ければ。
        

見つからないときは、TwitterのDMでも大丈夫ですよ。

 


Eさん     承知しました。


進行    この「 リーディング・テーブル 」

ですが、読んだ本を手元に用意する以外は、事前準備は不要なんです。

        

一方、事後的なものとしては、画像送信だけをお願いしてます。        

唯一の手間になっちゃいますが。

 


Eさん    了解です。探してみます。

 


進行    Eさん、本日はお忙しい中、ありがとうございました!

        

この「 リーディング・テーブル 」はこれからも開催していく予定です。
その博覧強記のトーク、ホント楽しかったです。
是非是非、またお越しくださいね。

 


Eさん     こちらこそ、ありがとうございました。それでは失礼いたします。

 


一同   ありがとうございました!( 拍手 )

         

          (Eさんがオンラインから退出される)
 


進行     ここで一旦、5分ほど休憩をはさみましょう。トイレに行きたいというチャットも入ってますし。
 
あっ!

 

チャットだから読み上げちゃマズイか・・・。
 

一同   ( 大笑い )

 


進行    いや~、ごめんなさい。

それでは休憩に入りましょう。

一同     分かりました~( 数名が中座 )。

​    (「その10」へと続く)     
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​レイ・ブラッドベリ
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Gibson_front_portrait.0.jpg
​ウィリアム・ギブソン
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51e05085de23e2eb8bb748b53e3b20cd_edited.
​伊藤 計劃
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​神林 長平
​リーディング・テーブルの実際例〜その10 
​    (「その11」へと続く)     

ここから、残った人たちの間で、参加したきっかけについてのお喋りが始まる)

 

 

(数分後、中座していた方が次々と着席)

 


進行     あっ、Dさん、帰りなさい。
ちょうど今、みんなで、今日の読書会に参加した
きっかけについて話していたんですよ~。

        

Dさんは、どういうきっかけで参加されたんですか (笑)?

 

 

Dさん    進行さんが直接、誘ってくれたからですよ~!  

 


一同     ( 大爆笑 )

 


Dさん     ナンパされちゃったんです~( 笑 )。
 

進行    ( 笑いながら )いや〜、知ってて、

話しを振っちゃいました。

 


Dさん   やっぱり、「 人文 」って言葉に惹かれましたね~。 

 


進行         それは嬉しいですね、ホント!! 
 

サークル名に「 人文書 」の三文字をつけるか否かで、非常に悩んだんですよ、実は・・・。

        

この三文字をつけることで、今後の参加者集めには苦労するでしょうから・・・。

 


Dさん    それぐらいセグメントされた方がエッジがきいて面白そうですよ!
        

読書会に「 人文書 」ってつけて、良かったと思いますよ~。

 


一同      うんうん

 


進行    Dさん、ありがとう~!(涙目)


そうだ。
先ほどDさんが世界史の教科書に言及されていましたよね。

 

有名なのは山川出版社の『詳説世界史』ですが、実は同じ山川から『 新世界史 』( 自分が持っているのは『 新世界史B 』)というのも出てるんです。

        

こちらの方は、大御所の『 詳説 』に対し、ある種の挑戦・挑発をしてるといううか・・・。        

まぁ、ケンカを売ってる感がしますね。

切り口がちょっと違うんですよ。
俺たちの方はこういうこともできるんだぜ!

みたいな ( 笑 )。

 


一同   ( 大笑い )

 


Dさん   いろんな識者が、各トピックを書いているような形式なんですか?

 


進行    はい、そのようですね。

それと『 新世界史 』の方は、コラム解説も充実してるんです。
        

例えば「 サン・シモン主義 」。
これに20行以上もかけて、コラムで解説してるんです。

 

 

Dさん   ホントだ。そこまでやってるんですね。

 


進行      切り口も面白いですし、読み物としても面白いんですよ~。
 
おっ。

全員戻られましたので、再開しましょうか。
        

それでは次はちょうどDさんですね。
よろしくお願いします!

 


Dさん    はい、お願いします。
最近、読んだ本では・・・、これですね。
        

結構、分厚いんですけど。

『 中国の歴史 』(講談社)っていうシリーズものがあって、それの第三巻。『 ファーストエンペラーの遺産 』というタイトルなんです。 

       

秦と漢をメインに書いてます。
時代は、あの『 キングダム 』ですね、大人気の。

                       

私も『 キングダム 』好きなんですけど、あの主人公の友人は、始皇帝なんです。

その始皇帝が作った秦と漢帝国の歴史を書いた本になってます。

 


一同    おおーっ!

 


Dさん    この辺って結構、日本の教科書とかでもよく取り上げられていて。


それこそ始皇帝の秦が終わった後って、項羽と劉邦戦いで有名な「 鴻門の会 」などを国語の教科書でやった気がするんですよね。

 


Aさん      あっー、なんかやったかも。

 


Dさん      僕も記憶が薄いんですけど、

国語( 漢文 )でやったなーとか。

 

あと「 四面楚歌 」や「 垓下の戦い 」とかも国語でやったなあと思いつつ、読んでたんですけれども。

        

この本の出版は2004年で意外に新しくはないんですけれども、バランスよく書かれていてですね。

        

そうだ、皆さんは『キングダム』って読んだことありますか?

 


進行         はい。

『 週刊ヤングジャンプ 』で毎週、読んでます。
 

Dさん   (笑いながら)毎週なんですね!
 

この始皇帝が、七つの国に分かれていた中国を統一するまでを舞台にしているのが、この『 キングダム 』なんです。

 


進行     大好きなマンガです。

 


Dさん      ヨーロッパ史と東洋史ってよく比較されることが多いのですが、ヨーロッパって、どちらかというと小さな国が細かく分かれたりだとか。
        

あとは中世になるとベネチアやミラノなど、いわゆる都市国家っていう形で分散されることがすごく多かったんですよね。

        

時代が流れ中央集権が進んで、国民国家が出て来てっていう話になってくると思うんですけども。

        

一方、中国の方は、既にファーストエンペラーである始皇帝の時代に統一されちゃってますと。

 


一同      うんうん。


Dさん    じゃあ、なぜ、行政機構が整備され、統一されていったかっていうと、いろいろあるんですど、やっぱり文章が保存されたという点がすごく大きかったと。

        

まず木簡。

それと、漢の時代に発明された紙ですね。        

この二つの果たした役割が大きかったと言われてます。      

        

やっぱり皇帝の命令をちゃんと文字に起こして、それを木簡あるいは紙という状態で全国に展開できないと、領土に行き渡らないんですよね。      

        

そうなってくると、今度は文字を書ける人も必要になってきます。

 


一同     たしかに~。

 


Dさん      人は皆そうなんですけれども、この時代は特に、文字というものは学習できる境遇にいないとできないわけです。

        

文字を使いこなす能力と、紙などの記録媒体っていう存在があって初めて、広範囲に渡る中央集権システムってのができたんですよと。

        

そういう内容で書かれておりました。

 


一同    納得。

 


Dさん    司馬遷の『 史記 』っていう中国の歴史書があって、それがすごい好きなんです。

        

その『 史記 』にも、やはり項羽と劉邦の戦いってのがよく出てきます。
「 楚漢戦争 」と言ったりもするんですが。

        

この 二人は真逆の人間性を持っているんですね。

理想の上司ってこういう人よねだとか、格好いいなとか。
        

こういう人がリーダーになっていくのかなって思った時に、やはり、「 項羽と劉邦 」というのが1つのモデルになることが多くてですね。

 


一同    そうそう。 

 

 
Dさん      項羽は、言ってしまえば「 おぼっちゃん 」みたいな感じなんですよ。
 

始皇帝の秦ていう国が天下を統一したんですけど、もともとは7カ国( 戦国七雄 )のうちの1つに過ぎなかったんですね。

        

項羽は秦に滅ぼされた側の大将軍の血縁者なんです。だからこの秦に対して、すごく恨みがあるわけですよ。
 

自分の国が 滅ぼされているので。

        

そのため項羽はこのファーストエンペラーの国を滅ぼした時に、めちゃめちゃ人殺したりするんです。

 


一同     ああー。

 


Dさん      一方、対照的に、劉邦っていう人はですね、血縁とかそういうステータスはないんですね。地方の本当に下っ端の役人みたいな。
        

しかも今でいうと、「 半グレ 」みたいな遊侠集団のリーダーでもあるんですよ。

        

そこに有能な人がいろいろと集まってきて、最終的な統一をしていくと話なんですけど。

 


一同     なるほど~。

 


Dさん      面白いなあって思ったのは、国語の授業でやったと思うんですが、「 四面楚歌 」っていうエピソード。

        

もともと「 楚漢戦争 」っていうぐらいですから、楚と漢が覇権を争っていたわけです。

        

だから楚の項羽は、漢と戦っているという認識だったんですけれど、敵方である漢陣営から聞こえてくるんです。自分のホームであるはずの楚の歌が。

        

それでさすがの項羽もショックを受けるわけなんですね。地元の人達も敵方に寝返ってしまったのかと。

        

よく悲しい話として言われるんですけれど・・。
        

実はですね、敵方の劉邦も、出身地自体は楚なんですよね~( 笑 )。

 


一同    ( 大笑い )

 

Dさん    つまり、楚の人達が中心になって秦帝国を倒したわけなんです。項羽も劉邦も、ともに出身地が楚ですから。

        

そして「 四面楚歌 」と言いつつも、両陣営ともに楚だったと ( 笑 )。

 


一同      言われてみれば、そうだ ( 笑 )。

 


Dさん    この本の最後はですね、

「 三国時代 」を取り扱ってます。
        

いわゆる「 三国志 」ですね。

        

劉邦が作った漢帝国も、やがて衰退していくんですよ。そこまでの時代を本書はカバーしてます。

        

この本の特徴をあげれば、地図が分かりやすい点があげられます。
        

こういう歴史関係の書籍で地図が見