告知文『自転車泥棒』(呉明益、春秋文庫)
自転車が盗まれると真っ先に着手するのが、
警察への「盗難届」。
この提出が少しでも遅れてしまうと、
五千円の罰金を払えという恐怖の通知が、
豊島区から来てしまうから。
(盗まれた自転車が豊島区に撤去される
→「盗難届」の日付が撤去日より後だと、自己責任になる
→その場合、盗まれた自転車を取り戻すのに五千円かかる)
これは、放置自転車に厳しい豊島区だからこそのもの。
お住いの地域によって、
その取扱いは異なってくることでしょう。
そうなんです。
同じケースでも、その地域によって異なってくるのです。
また昭和・平成・令和など、ど
の年代かによっても変わってくることでしょう。
そして当然のことながら、
各人によっても価値観や考え方に違いがあるはず。
(8千円前後で新品が購入できるので、
電車やバスを乗り継ぎ五千円も払うのはちょっとね、とか)
このように
土地にはその土地独自の来歴があり、
その土地に住まう人々にもそれぞれの経歴があるのです。
さらにその人々が使用するモノにだって、
所有者の来歴に伴い、それぞれの過去があるわけです。
父が盗まれた自転車から、
土地・人・モノたちが織りなす歴史のあやを巡る旅に
踏み出してしまった主人公の「ぼく」。
一体、彼はどこに行き着つのか。
この物語の登場人物たちは、
主人公をどこに連れて行こうとするのか。
時代の波に翻弄される人間たち使用されることで、
それぞれのドラマを奏でる数々のモノ、モノ、モノ。
過去の思い出たちが新たな謎を生み出していく。
台湾の代表的作家、
呉明益の「自転車泥棒」。
この機会に、みんなで読んでみませんか?
歴史好きの方にもオススメの小説なんですよ。
