告知文:『昼の家、夜の家』(オルガ・トカルチュク、小椋彩[訳]、白水社)
〈主宰者より〉
読書会を開催するに当たり、
この作品を何と形容しようか考えてみた。
例えば、
「未来が過去を規定し、現在を生成する」という言葉がある。
これは時間軸の流れとは逆に未来(目標)に焦点を当てることで、過去がクローズアップされ、それが今現在に活きてくる。というぐらいの意味だろうか。
一方、この作品の場合はどうだろう。
目に見える世界と見えない世界。
時系列的で連続的なクロノス的時間と
経験的で変容的なカイロス的時間。
数値的で計量的な世界と
身体感覚的で色とりどりの属人的な世界。
社会性と霊性などなど。
これらが渾然一体としている世界観なのだ。
先に引用したフレーズを借用すれば、
能動が受動を規定し、中道を生成する。
受動が中道を規定し、能動を生成する。
中道が能動を規定し、受動を生成する・・・・。
(他の組み合わせは割愛)
別の言い方をするならば、
陰と陽、顕と幽と密、必と遇、線形と非線形
といったものが織りなす彩。
そうとしか言いようのない物語なのである。
(そして、これらの関係性そのものが、
「知」や「教養」といったものに通じているのではないか?)
ポーランドの地を舞台にした、
西洋的とも言えるし、東洋的とも言える物語。
みんなで繙いていきませんか?(以上)
〈共同企画者より〉
昼の家 夜の家」
オルガ=トカルチュク著
ノーベル賞ポーランド作家
昼の家”意識
“夜の家”無意識
キノコと戦争のイメージ
フロイトの夢ー意識ー無意識の死生観
精霊的リアリズム
ポーランド国境と心理学を土台にした101連作短編
夢 料理 宇宙 占い 殺人 神話 聖人 歴史
無関係が関係し合う静謐な物語
(参加予定者より)
人びとの生の営みや思念といったものが、
家や土地には刻み込まれている。
つまり、それらは家や土地の栄養分。
そして過去・現在・未来が
地下茎のように絡まりながら、
相互に影響し合う。
そんな百十一の挿話からなる物語。
